プロフェッショナル
今から23年前、カメラマンとして駆け出しの頃に「さすがプロだねえ」とか言われると僕は口癖で「写真で食ってれば誰でもプロですよ」と返事をしていた。 当時でもきちっとした質を重んじる仕事をしていたつもりだったが、自分が憧れた多くのベテラン・フォトグラファーがいる世の中でまだ駆け出しの自分が同じようにプロ扱いにされることが恥ずかしかったのかもしれない。 でも、その反面で自分は他人には負けない技術があるんだとプライドを持っていたことも確かである。
しかし、この仕事を長年やっているとやはり経験がものを言うのだなと実感するようになった。 それはプロというものは技術どうのこうのではなく、どんな状況や条件の下でもお客さんの求めているものを確実に提供すること。 たとえば先日の北京にて簡単に撮れそうだと思っていた写真が意外に手こずり、一日目の終わりで使えそうなものがないとわかった瞬間にプレッシャーを感じた。 わざわざワンカットの為に東京から北京へ派遣してくれたクライアントに「北京はラフの絵の状況と違うので撮れませんでした」なんて言えない。 一時は別のおさえショットまで撮って最悪の場合はこれで納得して貰うしかないかとまで考えたが、それは結局妥協であって発注側のニーズを満たしていないと感じた瞬間に自分をさらにプッシュする気持ちへと変わった。 毎朝5時に起床して早朝から零下の気温の街へ繰り出して頑張ることによって道は開けてきて最終的にはクライアントが求めているとおりの写真を納品できた。
つくづく感じることだが、壁にぶち当たってもう駄目という苦しい立場のときほど後で考えると良い仕事が出来ている。 この時に諦めないことが肝心である。
こうして考えると「プロ」という言葉の本質が見えてきたというか実践しているような今日この頃である。
最近はなにかと歳をとったと嘆いているが、やはり歳をとって経験を積んだことでないと見えてこない部分は大きい。
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