Monday, December 31, 2007

一生を飾る

先日、留守電に年輩の女性から「電話をいただきたいのですが」というメッセージが入っていた。 電話してみると約11年ほど前に撮影した社長さんの奥様でした。 話を聞くとご主人様が今月お亡くなりになられたとのことで、その際に私が撮影した写真を遺影に使用したら参列者ほぼ全員から素晴らしい写真だと誉められたそうです。 あまりにも写真に対するコメントが多かったために写真が入っていた封筒のラベルを見て電話をかけてみたそうです。 ところが封筒のラベルに記載されていたのは昔のスタジオの番号だったのでもちろん繋がりません。 そこでわざわざ104に電話して調べてもらったそうです。そこまでされて連絡を取られてきたのには理由がありました。
11年前に写真を納品した際にご主人様はこの写真をたいそうお気に召し、良い葬式写真ができたと喜んだそうです。 そして奥様に「おまえも撮ってもらったらどうだ?」としきりに言ったそうです。 今回連絡をくださった理由はそのことを思い出してご主人の遺言として自分も写真を撮ってもらえないかということでした。 不幸でありながらも私が撮った写真が人生最後の場で祭られることは光栄なことです。 以前に三省堂書店名誉会長をされていた弁護士上野久徳先生のお別れ会でも私が撮影した写真が大きく引き伸ばされて光栄に思いました。 これからも撮った方にとって一番の写真となるよう努力していきたいと願っております。

Friday, December 28, 2007

適応


海外取材の依頼があったときにまず真っ先に考えるのが持っていく機材のこと。 最近は航空会社の手荷物規制が厳しくなったおかげで荷物が何かと多いカメラマンにとってはかなりストレスとなる。 出来ることなら最小限の機材で出かけたいが、現地で商品撮影や料理撮影があるとライティング機材をどうするかの問題が出てくる。
私のホームページにある時計の写真の多くは4年前にスイスのバーゼル・フェアとジュネーブサロンに行った際に見本市会場の現場で撮ったものである。 このときはクオリティー優先の為に日本からモノブロック、スタンド、トレぺなど多くのスタジオ機材を持ち込んだのだが、これらの照明機材とカメラ機材を毎日、2週間以上もの期間持ち歩くのは非人道的ではないかと思えるほど大変だった(笑) 
雑誌の海外取材となれば、たとえ料理がメインでなくても必ず撮って欲しいという要望があったりする。
では、料理写真でもどの程度のレベルを求めているかによって持っていく機材が変わってくる。
今回ポートランドへ行く事前の打ち合わせで「料理がメインではないので料理専門誌までの撮り方をしなくていいよ」と言われて大型ストロボおよびモノブロックは不要とわかってほっとするが、その反面いい加減な写真を撮れないのでこれまた考えてしまう。 昼間の撮影であれば自然光という手があるが、夜に暗いレストランとなればどうするか? とりあえずニコンの小型フラッシュは一個持って行くことにした。 しかし、ディナータイムに客が入っているところでフラッシュを焚くのも迷惑であるので気が引ける。 テーブルにスポットライトがあたっていればその明かりを利用することができるが、そうでないロウソクの灯りしかない暗いレストランではどうするか? 
今回デジタルを使っていて良かったと思えたのは上の写真のようにロウソクの明かりだけで撮った後にフォトショップで色調整ができるという点である。 もちろん一つのロウソクだけではなく、背景が溶け込まぬようにバックグラウンド用に一個、そして手前はテーブル上にあった残りのロウソク(2~3個)を集めて2~4秒くらいのシャッターで撮ったのである。 後は誰かに白い紙かナプキンをレフ代わりに持っていただくと結構いける。 フィルムだったら相反則不軌や真っ赤でどうしようもない写真で終わってしまう。 デジタルのおかげでこれまでに出来ない冒険ができるようになった。 ちょっと前までの「この機材がなければ撮れません」というしがらみから解放されてもっと現場に適応する考えを持てるようになったのはいいことである。

Saturday, December 22, 2007

ロハスなポートランド





12月上旬は久々に雑誌の取材でアメリカ オレゴン州 ポートランドへ行ってきました。 シアトルと似た雨の多い天候でしたが、こじんまりとした街は結構落ち着きます。 滞在中によく耳にした言葉が「サステイナビリティー」。 この街の多くのビジネスは事業を営む上で他人に与える影響や環境のことをよく踏まえ、長く持続する為にはどのようにすればいいのかを考えているようでした。 またダウタウンの古いビルは日本のようにすぐ壊して新しいものを建てるのではなく、きちっとリフォームして新たな価値を生み出していました。 古くからの街並みを保存できてとてもいいことだと感じました。 日本も次々と何とかヒルズのような再開発をやるのではなく、日比谷にあった三信ビルのような歴史的建造物は修復して残して欲しいものです。 また、ポートランドのレストランではなるべくローカルでとれた旬の食材しか使わないということをよく聞きました。  あとオレゴン州では消費税がないので買い物をするのには大変有利です。 その代わりに所得税は高いと聞きますので、逆に所得税がなくて消費税の高いシアトルで働いて大きな買い物をする場合はポートランドに来るのはどうかなと考えてしまいました。 

ポートランドにはカリフォルニアを凌ぐピノ・ノワール ワインの産地のウィラメット・ヴァレーがあってこれは魅力的でしたが、今回は時間がなかったので次回の宿題にしたいと思います。

上の写真は唯一晴れた日に丘の上から見えるマウント・フッドとポートランドの街。 下は到着した初日に時差ぼけのまま撮ったポートランドの夜景。 ちなみにこの特集は2008年1月24日に発売される月刊ランティエ3月号(角川)に掲載される予定。